第1章で、ほとんどの局面がでたらめとも思えるポジションであったのに、 たった一つだけまともな局面が含まれていることが分かりました。 これでは、監修者がいると考えてもいないと考えても、どちらも納得できません。 ここでは、本ストーリーを作画するにあたり、監修者がいるのかを検証したいと思います。 検証の方法ですが、「監修者がいないであろう根拠」は山ほどあるのでそれは第2章に譲るとして、 ここでは「監修者がいるであろう根拠」について検証することで監修者の有無を検証したいと思います。 明智警視の優雅なる事件簿
〜3.監修者はいるのか〜
さて、その「監修者がいるであろう根拠」ですが、それは以下のようなものです。「だがあの投了図は1970年アメリカの名プレイヤー ロバート・フィッシャーが」 この文章を読んで「偶然の一致だ」というチェスプレイヤーは皆無のはずです。 偶然でフィッシャーとスパスキーの名前が出るはずないのですから。 しかも“ボビー”・フィッシャーではなく“ロバート”・フィッシャー。 あまりにも具体的なので、これに該当するゲームが存在するか調べてみました。 探したゲームは、1970年の世界大会でフィッシャーとスパスキーが戦ったゲームのうち、フィッシャーが勝ち、以下の局面を含むもの、です。
「世界大会でソ連の強豪スパスキーを破った時の型とそっくりだったんです・・・!」
(127ページ3コマ目)
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私の手持ちの棋譜で、フィッシャーとスパスキーの戦ったゲームは57ゲームあります。 その中で上記の条件に最も近いものは以下のゲームだと思います。[Event "?"] [Site "Reykjavik WCh"] [Date "1972.??.??"] [Round "5"] [White "Spassky Boris"] [Black "Fischer Robert"] [Result "0-1"] [ECO "E41"] 1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 Bb4 4. Nf3 c5 5. e3 Nc6 6. Bd3 Bxc3+ 7. bxc3 d6 8. e4 e5 9. d5 Ne7 10. Nh4 h6 11. f4 Ng6 12. Nxg6 fxg6 13. fxe5 dxe5 14. Be3 b6 15. O-O O-O 16. a4 a5 17. Rb1 Bd7 18. Rb2 Rb8 19. Rbf2 Qe7 20. Bc2 g5 21. Bd2 Qe8 22. Be1 Qg6 23. Qd3 Nh5 24. Rxf8+ Rxf8 25. Rxf8+ Kxf8 26. Bd1 Nf4 27. Qc2 Bxa4 0-1このゲームの黒15手目が図3と非常によく似ています。 唯一、d1がキングでなくクイーンであるという違いがありますが、本の絵が不鮮明であることを考えると、2つは同一局面であると考えてもよいと思います。 以上の調査から、著者が何らかの資料を基に局面を描いていることが分かりました。 次に調査すべきことは、この資料を著者が如何にして手に入れたかということだと思います。 私の調べた限りでは、原作者の天樹征丸氏も作画のさとうふみや氏も1965年生まれということで、 上記ゲームが指されたのをリアルタイムで見ていて、それが印象に残っていたから本作品でそれを使用した、とは考えにくいと思います。 また、御二人ともチェスが趣味であるという記述は見つけることが出来ませんでした。 そう考えると、このゲームは本作品を描くために手に入れたものと思われますが、 インターネットなどから手に入れることの出来る膨大な棋譜の中から、偶然このゲームを選んだとも思えません。 やはり誰か監修者がいて、その人がこのゲームを提供したと考えるのが一番妥当だと思います。
私の結論としては、本作品には監修者がいるということですが、 それにしてはあまりにもおかしな点が多すぎます(第2章参照)。 確かにこんなどうでも良いようなことをこれだけ調べる人間は珍しいと思いますが(爆)、 チェスを指す人がパラパラと見ただけで不自然だと思ってしまう点がかなりあり、 もう少し真面目に監修をして欲しかったと思いました。前のページ 次のページ トップに戻る