最終更新日:2004/12/12

明智警視の優雅なる事件簿
〜1.局面検証〜

本ストーリーのクライマックスは、準決勝で明智刑事とゴールドマンが対局している最中、 ゴールドマンが舟木を殺害したときのアリバイトリックとゴールドマンが行なっていた不正について、明智刑事が暴くシーンです。 このとき、対局中の局面がいくつも描かれています。 そこでここでは、明智刑事vsゴールドマンのゲームにおける局面・指し手の再現が可能かどうかを調べていきます。

このページでは、識別できた駒はそれぞれの駒で、色だけ識別できた場合は白黒の丸、何があるか識別できない場合は'?'で表します。


図1:134ページ4コマ目
8 B-R ? ? B-Q B-K B-R
7 ? B-P B-B B-P
6 B-P B-N B-P
5 B-P W-P
4 W-P W-P
3 W-N W-N
2 W-P W-P W-P W-P
1 W-R W-Q W-K W-B W-R
a b c d e f g h

図1は黒c5までの局面です。 何だかすご〜くまともな局面です。素人が思いつきで作り出せるような局面ではないです。
図2:134ページ7コマ目
8
7
6
5
4
3
2
1
a b c d e f g h

・・・なんでしょうこれは。駒の数からするとまだ中盤のようですが、白全面崩壊のように見えてしまいます。 さらに言えば、双方ともキャスリングはしていないように見えます。 具体的に駒が識別できないので断言は出来ませんが、私には図1とは比べるまでもない局面に見えます。 GMクラスのゲームになると、こんな局面が生じ得るのでしょうか?
図3:137ページ2コマ目
8
7 B-N
6 B-N
5 W-N W-P
4 W-P W-N B-P B-P
3 B-P
2 B-R W-P W-Q W-B
1 W-R W-K W-R
a b c d e f g h

あれ、このポジションは・・・。白黒の駒の位置が図2と全く同じです。 話の流れから考えても、図2と図3は同一局面であると思われます。 また断言は出来ませんが、f7はキング、g2はビショップ、b6はクイーンと思われます。 まぁ、そんな細かいことは置いておいてもでたらめなポジションという印象はより強くなりました。 なにしろ、盤上の全てのポーンがパスポーンになってるんですから・・・。
図4:138ページ5コマ目
W-P W-B
B-P
W-R
W-K
図4は盤の一部しか表示されていません。そのため、白キングが第2ランクにあることは分かるのですが、どのファイルにあるかは分かりません。 ということで、簡単に逆向き解析してみましょう。 まず、黒ポーンが第4ランクにあることから、黒ポーンは前進していないことが分かります。そのため、図4の黒ポーンはeかfファイルにあることが分かります。 次に、黒ポーンがfファイルにあるとすると白ルックは'i'ファイルにあることになります。そのため、黒ポーンはe4にあることが分かります。 またこのことから、e5の白ポーンは図3におけるc2の白ポーンと言うことになります。
図4’:138ページ5コマ目(座標あり)
8 ? ? ? ? ? ? ? ?
7 ? ? ? ? ? ?
6 ? ? ? ? ?
5 ? ? ? ? W-P W-B
4 ? ? ? ? B-P
3 ? ? ? ? ? W-R
2 ? ? ? W-K ?
1 ? ? ?
a b c d e f g h
そろそろ局面に矛盾が出るかと思ったんですが、なかなか頑張っているようです。 あ、P138 5コマ目でiファイルが書かれているのは見なかったことにしましょう(笑)。
図5:140ページ5コマ目
8 ? ? ?
7 B-P ? ?
6 B-P B-B ? ? ?
5 B-R ? ? ?
4 W-P ? ? ?
3 ? ? ? ?
2 B-P W-P ? ? ? ? ?
1 W-R ? ? ? ? ?
a b c d e f g h
さて、再び逆向き解析です。図4の解説の所で、e5のポーンはc2から来たことが分かりました。 ということは、図5でc2にポーンがあるはずありません。 図5にしてようやく矛盾が出てきました。


結論としては、このゲームは何らかの棋譜をもとに局面を描いていたわけではない、ということですが、 そう考えると図1が非常に気になります。 図2以後を見ると、どうしても著者がチェスを理解しているようには見えません。 であるにも関わらず、図1は何らかの定跡の一変化に見えます。 作者は定跡だけ調べて中盤は適当に考えたのでしょうか? または誰かから図1の局面だけ考えてもらって残りを自分で考えたのでしょうか? 次の章ではさらにおかしな点を洗い出し、第3章で監修者がいるのか検証していきたいと思います。


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